CW回路の製作3

高電圧発生装置の検証もだいぶ進んできた。

ここで、昇圧回路の目的を確認したい。

 

そもそもただ単に高い電圧を取り出して遊ぼうと言うのもあるが、本来やりたかったのはそこではなくて静電気試験機の代替機器として同じ規格の電圧を印加する装置が作れないか、と言うのが発端である。

したがって目標の電圧値も決まっている。

今だとHBM(ヒューマンボデーモデル)と言う人体に帯電する電気からの放電を模した規格で静電気を印加できる機器を作ることが目的であった。

■参考記事

https://www.oeg.co.jp/esd/ESD.html#esd

 

この規格では300Vの電圧をコンデンサに充電して対象機器に放電させることで模している。

コンデンサには抵抗を直列に接続しており、CとRの乗数を任意に設定することで試験の厳しさを変えることができるようになっている。

組み合わせとしては以下の通り。

C : 100pF / 150pF

R : 500Ω / 1.5kΩ

 

で、150pFのコンデンサに高電圧を充電することはできたが電源を落とすとすぐに放電し切ってしまうことがわかった。

これはコンデンサが回路に接続されたままなのが原因で電流の回り込みが発生して電荷が逃げてしまったのでは?と考えたが、実際に回路から切り離してみても電荷がすぐに抜け切ってしまう。

もっと容量の大きいコンデンサの場合は放電時の時定数がゆっくりになるため、ある程度電圧を保持していることが確認できる。

つまり充電するコンデンサの容量に影響されて時定数が変わり印加タイミングをSwitchさせてやらねばならない事になる。

では実際の放電波形はどうなっているか、確認してみた。

 

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電源落とした際の放電波形

 

この放電波形から20V低下するのに大体2.5msかかっていることがわかる。

従って、回路側を切り離すスイッチと放電電極を接続するスイッチの動作速度から逆算して予め高めの充電電圧で設定してやらねばならない事になる。

現時点での昇圧発生電圧は100V程度であるので全然足りていないが、のちに300Vに達したとしてもあと数十Vは必要になる事は念頭に入れなければならない。

 

※試験回路図を載せる

 

で、前回の構成から昇圧に寄与する部分で変更可能なところはどこであったかと言うと昇圧コイルとCW回路の段数であった。

昇圧コイルを再度巻き直して1:5程度まで倍率を上げた。

また、CW回路の段数も4段から7段に増やした。

これらの変更を施した事によってオペアンプの駆動能力でコイルとCW回路を駆動することができなくなった。

従って構成が一部変更となる。

スピーカーアンプの製作などで使用したようにアンプの最終出力段をパワートランジスタでボルテージフォロアさせてやる事にした。

全く趣旨の違う回路で別の目的で作った回路の知識が生きてきたりするととてもテンションが上がるものがある。

※回路構成を載せる


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200V昇圧時の各測定ポイント

ch1 : 発振波形

ch2 : アンプ入力波形

ch3 : アンプ出力波形

ch4 : パワトラの出力波形
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出力電圧

 

で、以上の改良によって200Vほどの直流電圧を作り出すことができた。

また、そろそろブレッドボードで試験する電圧でもなくなってきているのでディスクリートに移し替える事にした。


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CW回路のディスクリート半田付け

 

と、ここまでやってきてふと思った。

CW回路に直接商用電源を接続すれば一瞬で数kVの電圧を作り出せるのでは?

かくして商用電源をあまり直接扱ったことがない為とても不安であったのでとりあえず波形を測定するところからやってみる事にした。

 

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コンセントのホット側、コールド側の波形


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負荷抵抗100kΩを接続した場合のホット側、コールド側の波形


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ダイオード一個で半波整流波形を取り出そうとしたときの波形

 

測定に際してはグランドを繋がず電源端子を直接プローブする。

コンセントは差し込み口をよく見ればホット側とコールド側の区別がつくようになっているが延長コードで机下まで引っ張ってきてあるので見分けがつかない。

このような場合はコールド側を1/2の確率で当てなければ高額なオシロスコープも一瞬でパァ( ᐛ👐)である。

もし真似する場合は十分に注意していただきたい。

で、ついでに半波整流波形も見てみたがよくわからない結果になったので後で検証する事にする。

 

まあそんなこんなで抵抗値と電流、電力計算が間違っていなければ大丈夫そうだったのでそこには気をつけて実験を敢行する事にした。


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商用電源によるCW回路駆動

ch1 : 入力波形

ch2 : 出力波形

 

結論から言うと全く昇圧されなかった。

なぜなのか。

上記波形を見てもらうとわかると思う。

ch1は入力波形であり商用電源の波形である。

ch2はCW回路の最終出力段の波形であるが、入力波形の下ピークに達した時点で持ち上がってそれ以外の部分で減衰していることがわかると思う。

これはつまるところ60Hzのスイッチング周波数で動作する昇圧チョッパみたいなものになっているのだ。

この時コンデンサの時定数より長いスイッチング周期でいくらスイッチングしても昇圧できないのは明らかだ。

従って昇圧できなかったと言う事になる。

もし60HzそのままでなんとかやりくりしてCW回路で昇圧したい、となった場合は単純にコンデンサの容量を増やしてやるか変圧器を入れて200V出力にするとかすると良いと思う。