電源回路の製作2(Simulation)

前回の電源回路ではAC100Vコンセントから整流してツェナーダイオードで任意の電圧を取り出す、ということをやりました。

今回はもっと低い電圧から定電圧回路を作成することにします。

具体的には12Vdcのアダプター出力から任意の電圧を出力するリニアレギュレーターというものを作っていきます。

回路図は以下の通りです。

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まずはこの回路の動作を説明します。

 

■初期状態

V1(12V)からまず初めにC2を通してM2(MOSFET)に電圧が供給されます。

このとき、FETのゲートには電圧が供給されていないためOFF状態であり負荷へ電圧は供給されていません。

これが初期状態です。

 

■過渡状態

次に、ゲートへはU2オペアンプ:AD8030)の出力が接続されています。

この出力の真理値は以下のように表されます。

+端子電圧>ー端子電圧 のとき 出力High(入力電位差×hfe)

ー端子電圧>+端子電圧 のとき 出力Low(入力電位差×hfe)

 このとき、+端子にはダイオード3個分のドロップ電圧(約1.8V程度)の電圧が電源から常に供給されています。

ー端子にはFET後段の電圧を抵抗で分圧した値が入力されています。

初期状態ではー端子は0Vになるため、上記真理値表からHighを出力することになります。

このオペアンプのhfeは10倍に設定されているため、1.8V×10=18が出力されることになりますが、実際には電源電圧ー1V程度の上限があるため11V程度がオペアンプから出力されることになります。

そのため、初期状態からしばらく経った後はFETのゲート端子へ電圧が供給されて負荷へ電流が流れだします。

これがこの回路の過渡状態です。

 

■定常状態

過渡状態はオペアンプの入力値が反転するまで続きます。

それまではFETをオンしっぱなしの状態です。

オン状態が続くと、やがて負荷電圧は電源電圧まで上昇しますが、オペアンプのー端子に分圧した電圧が供給されているため、+端子の1.8Vを超える分圧値に達したとき出力反転しFETをオフします。

すると負荷へ電流が供給されなくなるため電圧が下がってきます。

そうすると今度はオペアンプの入力値が反転してHigh出力に転じます。

この動作が以降途切れることなく繰り返されます。

これがこの回路の定常状態になります。

 

各乗数は回路の安定動作のために値をいろいろと調整してありますが、実機で組んでもおそらく問題なく動作するでしょう。

以下がシミュレーション結果です。

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余計な部品がいろいろとちりばめられていますが気にしない。

この波形では色によりそれぞれ以下のようになっています。

緑:電源電圧(V1の出力電圧)

青:MOSFETのゲート電圧(オペアンプの出力)

赤:負荷電圧(R1の電圧)

4usくらいまでは電源電圧がかかっていてもFETが動作していないことがわかります。

その後オペアンプが動作し、負荷へ電流が供給され始めて緩やかに電圧が立ち上がっていく様子が確認されます。

今回の目標値は9V程度に設定しましたが、出力電圧の分圧値(R2R3の抵抗比)を変えてやることで任意の出力電圧に設定することが可能です。

ただ、出力できる電圧の上限はFETのオン抵抗に依存しますので今回だと約10V程度が限界でした。

使用しているICはLTSpiceに事前に登録されているものをそのまま使っているため、あまり性能を出し切れていない可能性がありますが、欲しい部品の特性を模擬したデータベースはネット上を探すと出てくる場合がありますのでインポートして自分なりのシミュレーション結果を出してみるのも面白いと思います。

 

今回の記事は以上となります。