ACアダプターのノイズ除去

ACアダプターは電子工作をしている中では手軽にほしい電圧を提供してくれる優れものだ。

私がまだ工業高校にいた頃はまだその辺のことが全然わかっておらず、「買った家電製品に付属しているACアダプターは専用品だから他に流用できない」と信じ込んでいた。

実際、アダプターによってスイッチング周波数であったりリプルがどれくらい乗っているかとか、出力電流も違うので一概に互換しているわけではないがそれを知って使う分には問題ない。

とは言え、正規品を使うのが面倒くさくなくていいが。

 

話を戻してACアダプターは非常に手軽にDC電源を提供してくれるアイテムだ。

最近はハードオフなんかに行けば100円で手に入る。

しかし何事もトレードオフが付き物で、アダプターから取った電気は綺麗な直流ではない。

先にも触れたようにリプル(リップルとも言う)成分が乗っているのだ。

リプルと言うのは直流成分に微弱な交流成分が乗っかって波打っている状態のことを言う。

余計な交流成分が乗った状態で電子機器を動かすとどうなるかと言うと、リプルが悪さをしてノイズを発生させたりする。

まあ既製品などはその辺の対策もされていて、普通は問題になる事はないが電子工作などではこの辺を考慮しないと落とし穴にはまる。

 

最近、トランジスタアンプを作成した。

まだ記事にはしていないが、そのうちするつもりである。

まあそのトランジスタアンプであるが、ACアダプターから直接電源を供給しているのでスイッチングノイズを拾って無音の状態でもジーと言うノイズを吐いている。

これが結構な音量で、ゲインMaxのときは気にならないが音を下げてくるとだんだん気になり始め、目一杯音量を下げるとノイズにかき消されてしまう。

これは、一段目に置いているトランジスタの自己バイアス電圧にノイズが乗っかってしまっているためにそのノイズが増幅されてしまいこのようなことが起きていると考えられる。

 

この由々しき事態に対するため、ノイズ除去フィルターを作成することにした。

フィルタの設計などは初めてであるので本も買ってきて読んだりしたが難しい。

本来ならキチンと設計するべきなのだが面倒だったので適当に手持ちのコイルとコンデンサを繋いで実験した。

 

まず、ノイズ(伝導)には二種類ある。

・デファレンシャルモード

・コモンモード

本当は図を入れて説明したいけど面倒なので後回しにして(最近そんなのばっかだな)、それぞれ簡単に説明すると以下のような感じである。

 

・デファレンシャルモード

電源の+端子から入ってきて、-端子へ帰っていくノイズ

・コモンモード

電源の+端子と-端子の両方から同時に入ってくるノイズ

 

上記二種類のノイズのうち、コモンモードノイズについてはアレコレと研究がなされていて対策の打ちようもあるらしい。(コモンモードチョークコイルなど)

しかしデファレンシャルモードノイズについてはからっきしである。

やはりフィルタを構成して回路に流入しないようにして、パラで繋いだコンデンサからGNDに返すしか方法がないらしい。

※ACアダプターはデファレンシャルモードである。困る( ;´Д`)

 

と言うわけでフィルタを作るわけだが、基本的にはπ型フィルタとT型フィルタの二種類に分かられる。

これも図を入れたいが面倒なので省略する。

簡単に説明すると、πの時の横棒がコイルで縦棒がコンデンサに置き換わった形の構成がπフィルタ。

Tもそんな感じで構成した物。

全てのフィルタはいかに複雑な構成になっていようとも、回路の合成値を取っていくと詰まるところこの二種類に等価されるらしい。

言い換えると、これ以上の複雑さは必要ないと言うことだ(本当か?)

で、手元にあった1uHのコイルと100uFのセラコンでπ型フィルタを構成した。

すると、アダプターのスイッチングノイズの縦に伸びるヒゲみたいなものが無くなった。(だから図や写真を載せろって)

フィルタは直列にいっぱい繋げると大きな減衰特性を得られるので二段にしたところ、ヒゲは完全に消えた。

しかし、大元の三角波形になっている"揺らぎ"を消すことがどうしてもできなかった。

スイッチング電源はスイッチング周波数ごとにスイッチをON/OFF制御して一定の電圧を出力しているので、その間隔ごとに電圧が上がったり下がったりを繰り返して三角波形を生み出している。

結局のところそいつを除去しない限りはアンプのノイズは消せない。

もっと乗数の高いLCフィルタを構成する必要があった。

 

従って今回は以下のような乗数でフィルタを構成した。

L = 330uH

C = 1000uF

f:id:Rightblue9:20201109042242j:image

実験の様子。机が汚い。

 

この構成でどのくらいの減衰率があるのかはあとでLTSpiceを用いて計算するつもりだが、結果から言うとかなり減衰させることができた。

 

f:id:Rightblue9:20201109042441j:image

測定波形

ch1 : スイッチング電源の波形

ch2 : フィルタ後段の波形

 

こうして見ると、めっちゃ見づらいがch1はヒゲが瞬間で150mVほどに達している。

また、スイッチングによる三角波形も50mVppほどである。

対してフィルタ後段ではヒゲが無くなって、三角波形も20mVpp以下に収まっている。

また、急峻な立ち上がりが無くなっており三角形の尖りもなく丸くなっている。

これはつまり高周波成分が減衰されて無くなっていることを示している。

フーリエ級数を勉強した人ならわかると思うが、交流波形はさまざまな周波数の波形の合成値で表すことができる。

この時、急峻な立ち上がりであったり、カクカクした波形であったりするものは全て高周波の合成から成り立っていることが分かる。

従って、角が取れて緩やかな立ち上がりになっていると言う事はかなりノイズをカットできていることを示しているのだ。

 

とりあえず今日のところはここまでしかできなかったが、次回はアンプを鳴らしてみてどうかを検証してみようと思う。

 

長文駄文、失礼。